大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)8863号 判決
【主文】
一 被告は、別紙(一)記載の競馬騎手用手袋に使用されている別紙(二)記載の布地が特許登録第六二八〇七四号の特許権を侵害するものであるとの虚偽の事実を、文書又は口頭で第三者に対して陳述流布してはならない。
二 被告は、原告に対し、金三五万円及びこれに対する昭和五七年一二月三日から支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
四 この判決は第一、二項に限り仮に執行することができる。
【事実】
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 原告は、スポーツ用手袋、殊に、競馬騎手用手袋の販売等を業とする会社であり、被告は、競馬騎手用手袋を含む競馬用品の販売を業とする会社である。
2 訴外二見宏(以下「二見」という)は次の特許権(以下これを「本件特許権」といい、その発明を「本件発明」という)を有している。
発明の名称 抵抗小突起を有するゴム貼りメリヤス編
出願 昭和四二年一〇月二日(特願昭四二―六三〇二九号)
公告 昭和四六年四月二三日(特公昭四六―一五一五〇号)
登録 昭和四六年一二月一四日(第六二八〇七四号)
特許請求の範囲
「本文に詳記し且(つ)図面によつて例示したようにゴム編組織のメリヤス編布に於て、その裏編目の各ウエール上の任意コースに於て、単糸の3本或は数本合わせの太い編糸を以て、2コースに亘る長大の上段タック編目を形成なさしめ、該上段タック編目から数コース下がつた同一ウエール上に於て、同じく2コースに亘る下段のタック編目を形成なさしめ、上記した下段のタック編目から夫々上段のタック編目に掛けて、表編目の上面をタック編糸を斜線状に交叉なさしめて、上記の構成を全編布面に及ばしめ上記交叉点に於て、表編目面よりも若干突出した抵抗小突起をなさしめ、上記した表編目上又は表裏の編目上にゴム層ホオプレーン層合成樹脂層等を塗布して、加硫又は加熱をなさしめ、前記防水性の抵抗小突起をゴム面から若干突出なさしめることを特徴とする抵抗小突起を有するゴム貼りメリヤス編布。」
3 原告は、別紙(二)記載の布地(以下「イ号物件」という)をその掌面に使用している別紙(一)記載の競馬騎手用手袋(以下「本件手袋」という)を販売している。
4 被告及び二見は共謀して、昭和五七年七月ころ、原告の取引先である競馬用品販売店各店に対して、原告の販売にかかるイ号物件を使用した本件手袋が本件特許権を侵害するものであるとの通知を郵便葉書でなした。
5 しかしながら、原告の販売する本件手袋に使用されているイ号物件は本件発明の技術的範囲には属さず、これを属するとした右通知は虚偽の事実を記載したものである。
(一) 本件発明の構成要件は次のとおりである。
(A) ゴム編組織のメリヤス編布に於て、
(B) その裏編目の各ウエール上の任意のコースに於て、単糸の3本或は数本合わせの太い編糸を用い
(C) 右太い編糸を以て、2コースに亘る長大の上段タック編目を形成なさしめ、該上段タック編目から数コース下がつた同一ウエール上に於て、同じく2コースに亘る下段のタック編目を形成なさしめ、
(D) 前記下段のタック編目から夫々上段タック編目に掛けて、表編目の上面をタック編糸を斜線上に交叉なさしめて、
(E) 前記構成を全編布面に及ぼしめて右交叉点に於て、表編目面よりも若干突出した抵抗小突起をなさしめ、
(F) この表編目上又は表裏の編目上にゴム層ホオプレーン層合成樹脂層等を塗布して、加硫又は加熱をなさしめる
(G) 抵抗小突起を有するゴム貼りメリヤス編布。
(二) イ号物件の構成は次のとおりである。
(A)' 両面編組織のメリヤス編布に於て、
(B)' 二三本の同じ太さの編糸を用い
(C)'① 通常は二四本の編糸を供給して編成する両面編メリヤス編布を製造する丸編機を用いて、
② 二四本目の編糸を供給せず、二三本の編糸を供給して、
③ その内の二二本目の編糸の供給に際しては、他の編糸より幾分長めにし(ノックオーバーを大きく)、
④ 以て、供給しない二四本目の編糸と絡まるべき、二二本目の編糸を目外しした結果、
⑤ 若干突出したパイル調の編目を形成なさしめ
(D)' これに薄くゴム層を塗布した
(E)' 抵抗小突起を有するゴム貼りメリヤス編布。
(三) 以上のとおり、イ号物件は破線状に並んだ抵抗小突起の列をゴム面から若干突出なさしめることを特徴とする(目外しによるパイル調編目から成る)抵抗小突起を有するゴム貼り(両面編組織)メリヤス編布であるのに対し、本件発明は防水性の抵抗小突起をゴム面から若干突出なさしめることを特徴とする(タック編目及びタック編糸を斜線上に交叉なさしめて成る)抵抗小突起を有するゴム貼り(ゴム編組織)メリヤス編布であり、イ号物件は、本件発明とはその構成を全く異にし、その技術的範囲に属さないことは明らかである。
6 原告は、被告らの前記不正競争行為により営業上の信用を害された。更に被告らは将来に向つて前記不正競争行為を行う可能性があり、原告は営業上の利益を害される虞れがある。
7 被告及び二見は故意又は過失により前記不正競争行為をなし、原告に対し精神的苦痛を与え、本訴の提起を余ぎなくさせ弁護士費用等を支出させた。かかる損害は被告らの不正競争行為と相当因果関係があり、精神的苦痛を慰謝するための慰謝料及び弁護士費用等を合計すると、その金額は三五万円を下らない。
よつて、原告は、被告に対し、不正競争防止法一条一項六号に基づき請求の趣旨記載のとおりの前記不正競争行為の差止及び民法七〇九条に基づき損害金三五万円及びこれに対する不法行為の後で訴状送達の日の翌日である昭和五七年一二月三日から支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
(潮久郎 紙浦健二 徳永幸藏)
別紙(一)
「競馬騎手用手袋」
図面の説明
原告の販売する「競馬騎手用手袋」の第一図は、甲面の平面図、第二図は、掌面の平面図である。
掌面は、別紙(二)記載のメリヤス編布に薄くゴム層を塗布した生地を使用している。
別紙(二)
「薄くゴム層を塗布したメリヤス編布」
一、図面の簡単な説明
薄くゴム層を塗布する両面編メリヤス編布の編成組織を表わした図面である。
二、図面の詳細な説明
両面編メリヤス編布において、目外しを行ない、パイル調の突起を生じさせたものである。
その片側の面に対して、ゴム層を塗布する前の状態を示すものである。
日本国特許庁特許公報
(特許出願公告 昭四六―一五一五〇、公告昭和四六年(一九七一)四月二三日)
抵抗小突起を有するゴム貼りメリヤス編布
特願 昭四二―六三〇二九
出願 昭四二(一九六七)一〇月二日
発明者 出願人に同じ
出願人 二見宏
東京都北区上中里二の三六
代理人 弁理士 高木徳義
特許請求の範囲
1 本文に詳記し且図面によつて例示したようにゴム編組織のメリヤス編布に於て、その裏編目の各ウエール上の任意コースに於て、単糸の3本或は数本合わせの太い編糸を以て、2コースに亘る長大の上段タック編目を形成なさしめ、該上段タック編目から数コース下がつた同一ウエール上に於て、同じく2コースに亘る下段のタック編目を形成なさしめ、上記した下段のタック編目から夫々上段のタック編目に掛けて、表編目の上面をタック編糸を斜線状に交叉なさしめて、上記の構成を全編布面に及ばしめ上記交叉点に於て、表編目面よりも若干突出した抵抗小突起をなさしめ、上記した表編目上又は表裏の編目上にゴム層ホオプレーン層合成樹脂層等を塗布して、加硫又は加熱をなさしめ、前記防水性の抵抗小突起をゴム面から若干突出なさしめることを特徴とする抵抗小突起を有するゴム貼りメリヤス編布。